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2025.12.17 from the CEO

<2025年11月を振り返って>山内英貴

代表取締役CEO兼社長
山内 英貴

11月は欧米の多くの市場参加者にとって事実上の決算期であり、12月からホリデー・シーズン入りするため、ポジションを手仕舞う動きがでやすいといわれていますが、株式・債券ともに調整気味に推移して終えました。

足許、米国ではコロナ禍に伴う家計の余剰貯蓄が食いつぶされて、雇用の弱さも観測されるようになり、早期利下げ観測が広がっています。一方、日本では、高市政権誕生に伴い、慎重姿勢を示していた日銀が金融政策正常化路線に回帰する動きとなっており、年内の利上げと長期的な目標金利水準引上げの可能性が織り込まれ始めました。

日米金融政策が逆方向に向かい、短期金利差の縮小にもかかわらず、ドル円の底堅さは印象的ですが、ドル安円高リスクは高まっていると思われ、注視していますが、為替リスクをヘッジする方針には変更ありません。

来年を展望するのは早すぎるかもしれませんが、主要国では、拡張的財政政策と緩和的金融政策というインフレ型の経済政策運営が予想されます。株式や不動産などリスク資産にはプラス、国債や現預金のような無リスク資産には逆風となりやすい環境です。とくに、中央銀行と政府の距離が近いものになると、金融政策には緩和圧力がかかりやすく、積極財政も相まってイールドカーブはスティープな状態が続き、インフレ圧力に対する中央銀行の対応は遅れがち(英語でビハインド・ザ・カーブと呼ばれる状況)となる可能性があると考えています。また、日本を筆頭に、実質短期金利がマイナスという状況は、金融資産の保有者である家計には逆風、公的債務が膨張している借り手(財政)には追い風となります。それを示すデータとして、日本の公的債務残高は2020年の対GDP比260%超をピークに、ここ数年で大きく改善(220%台に低下)しています。(分子の)公的債務残高の膨張以上に、インフレによって(分母の)名目GDPが拡大しているからです。このように、家計が実質購買力低下というコストをあまり意識せずに負担する一方、公的債務の実質返済負担が改善する状況はときに「インフレ税」と称されます。

ビッグ・ピクチャーでも述べている通り、インフレ環境への転換という見立てが間違っていないのであれば、既述の通り、株式投資には順風、債券投資には逆風となり、20世紀後半に確立された株式・債券の分散ポートフォリオ理論は以前ほどうまく機能しない可能性があります。そこで、債券に期待されていた機能を肩代わりするのがオルタナティブであり、当戦略においてはヘッジファンドです。

GCIエンダウメントファンドの骨子は、リスク管理を最優先した「長期分散」投資をシステマティックに継続することです。インフレ的な環境でグローバル経済の成長から果実を期待できる株式と、市場のボラティリティを収益源のひとつとして債券に代替し得るヘッジファンドをポートフォリオの中核として、円ベースでのリスク管理を最優先し、安定的な成果を受益者のみなさまとともに目指してまいります。

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